雪庇

昨年は北海道での初雪が早く、工事現場では塗装工事、防水工事に遅れがでて、引渡しの遅れや、年内に工事が完成が出来ない現場も多々あったと聞きます。
また関東では、1月20日の大雪は、通勤・通学に多くの被害が出ている模様が連日TV放送されておりました。

さて、この雪によってできる雪庇という自然現象についてお話をさせていただきます。

北海道の建物は昭和40年代は三角屋根の切妻屋根の形状が多く、雪が降っても屋根に雪は堆積する事も無く、トタン屋根上を滑らせて敷地内に堆積させていくのが一般的でありました。
しかし、敷地の弱小にともない、堆積スペースの問題や、落雪の際の通行人への人的被害、隣地への雪の侵入等により、50年代後半頃から、屋根に雪を堆積させる無落雪屋根の工法は主流になってきました。

この無落雪屋根の普及によって、屋根に融雪水を処理するダクトという水平の樋状のものを設置しなければならず、ダクトからの漏水が大きな問題となっておりましたが、近年は、断熱や気密などの施工技術も上がり、経年劣化に伴う漏水事故はありますが、竣工後の最初の冬の漏水事故はほとんど無くなってきております。

逆に近年の大きな事故になっているのが、雪庇による事故です。
無落雪屋根の普及により、屋根に雪を乗せたまま春の気温が上昇するまで、屋根に雪を載せた状態ですので、確認申請等の、建築基準法施行令第86条第3項に基づく道内市町村の垂直積雪量が定められています。

その積雪量によって、構造計算は行うのですが、雪が降れば、その堆積量がどんどん屋根に積もって行くかと言うとそうではないのです。
例えば、札幌では140㎝ですが、屋根に140㎝堆積するかというとそうではなく、下階の熱によって雪も解けます。
また建物の外周にはパラペットが約30㎝ほど立ち上がっているので、そのパラペットを超えて堆積される事はないのです。要は風によって雪は、パラペットの高さを超えた場合には吹き飛んでしまうのです。

風により吹き飛んでしまえば問題は無いのですが、降雪と温度と風の影響によって、パラペットを超えて雪がせり出す(オーバーハング)現象を雪庇と言います。
このせり出した雪がどんどん大きくなって、自重に耐えきれなくなって、落下してしまうのですが、歩行者に怪我をさせてしまったり、駐車してある車を破損させてしまいます。

この雪庇が出来る方角ですが、南東側が一般的で、雪庇が出来る方角のパラペット上部に、雪庇対策として、専用の金物を設置したり、雪を融解させる為の温水装置を設置する場合もあります。
何もつけない場合には年に2回ほど屋根に登って、人力で雪庇を落とす事も、被害を出さない為にも必要不可欠な行為です。

また、同じ北海道でも、苫小牧市や釧路市では、雪はほとんど降らず、雪庇対策と言う概念はほとんど無く、気温が低い場所ですので、断熱の仕様UPを考えなければならない地域特性が有ります。

広い北海道でアパート、マンションの取得を考える際には、イニシャルコストとランニングコストの地域特性も考えた知識が、必要なスキルとなります。

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